デスクワーク中にふと気づくと、奥歯を噛みしめている。夜中に食いしばっているようで、朝起きると顎まわりと首肩が重い。ご相談の中では、こうしたお悩みは「顎の問題」として語られることが多いのですが、実際に身体を確認していくと、首・肩・背中まで含めた全身のこわばりとつながっているケースが少なくありません。
この記事では、恵比寿LOOP鍼灸院に食いしばりによる首こり・肩こり・顔まわりのこりでご来院された方の実際の経過を、当院の考え方とあわせてご紹介します。
食いしばりが「顎だけの悩み」で終わらない理由
食いしばりに使われる咬筋・側頭筋は、頭部を支える首や肩の筋肉と連動して働きます。噛みしめが続くと顎まわりだけでなく、後頭部から首すじ、肩、肩甲骨のあいだまで力が入りっぱなしになりやすくなります。
また、忙しさや生活リズムの乱れが続いているとき、身体は無意識に「気を張った状態」を保とうとします。その結果として噛みしめが強くなり、さらに首肩がこわばる——という流れをたどる方もいらっしゃいます。
そのため当院では、顎の症状であっても顎だけを診るのではなく、まず全身の状態を確認するところから始めます。
ご来院時のお悩み(30代・男性・会社員)
- 半年ほど前から仕事が忙しくなり、部署異動もあって生活リズムが乱れていた
- 気づくと身体の力が抜けず、頚肩から顔面・顎まわりにつらさが出てきた
- ご自身でいろいろ試したものの、大きな変化を感じられなかった
- 鍼灸を試してみようと思い、ご来院
お話を伺うと、症状そのものよりも「常に力が抜けない」という感覚が半年続いていた点が印象的でした。
顎に直接鍼をせず、全身から整えるアプローチ
確認したところ、口が開けにくい、顎を動かすとクリック音がする、といった症状はありませんでした。そこで顎に直接鍼をするのではなく、当院がふだん行っている全身の状態からアプローチする施術を行いました。
これは一般的にイメージされる「痛いところに鍼を打つ」鍼灸とは異なる考え方で、鍼灸がはじめての方にも受けていただきやすい進め方です。
施術後に見えてきた「肩甲骨の内側」
施術後に確認すると、頚肩まわりの筋緊張と顎のこりは楽になっていました。一方で、それまで大きな塊のように感じていたつらさが軽くなったことで、ピンポイントで気になる場所がいくつか浮かび上がってきました。
ご本人が挙げられたのは、肩甲骨の内側にコリコリと触れる部分です。背骨まわりを丁寧に触診したところ、第5胸椎の際に最も強い反応が確認できたため、その一点にお灸を行いました。再度確認すると、肩甲骨の内側で気になっていた部分も落ち着き、その日は経過を見ることにしました。
強いこりが取れて初めて、それまで隠れていた反応が表に出てくる。これは施術後の確認を丁寧に行うからこそ拾える変化だと考えています。
2週間後の経過と、その後のメンテナンス
2週間後に再度同じ考え方で施術を行ったところ、睡眠の状態や身体の力みについても気にならなくなっているとのことでした。現在は月1回程度のメンテナンスで、お元気に過ごされています。
※症状の経過には個人差があります。すべての方に同じ変化が起こることをお約束するものではありません。
食いしばりが気になる方のセルフチェック
次の項目に心当たりが多い方は、顎だけでなく全身のこわばりが背景にある可能性があります。
- 日中、気づくと奥歯を噛みしめている
- 朝起きたときに顎や側頭部が重い、だるい
- 首すじ・肩・肩甲骨のあいだのこりが慢性化している
- ここ半年ほどで仕事量や生活リズムが大きく変わった
- 寝ても疲れが取り切れない感じがある
なお、口が開けにくい、顎を動かすと強い痛みや音がする、といった場合は、まず歯科・口腔外科でのご相談をおすすめします。
用語の説明
- 咬筋(こうきん):頬のあたりにある、噛みしめるときに働く筋肉。
- 側頭筋(そくとうきん):こめかみのあたりにあり、咬筋とともに噛む動作に関わる筋肉。
- 胸椎(きょうつい):背骨のうち、肋骨がつながっている部分。首の骨(頚椎)の下に12個並びます。
- 触診(しょくしん):手で身体に触れ、筋肉の張りや温度、皮膚の状態などを確認すること。
- お灸:もぐさを使い、温熱で身体に働きかける施術。
顎のつらさから、全身のこわばりへ
今回のように、顎の症状をきっかけに全身の力みやこわばりが見えてくるケースは少なくありません。「食いしばりだから顎の問題」と切り分けずに、身体全体の状態としてご相談いただければと思います。
恵比寿LOOP鍼灸院は、JR恵比寿駅から徒歩3分。慢性のお悩みも急性のお悩みも承っています。鍼灸がはじめての方もお気軽にご相談ください。