「毎晩の夜泣きで親も眠れない」「かんしゃくや癇癪(かんしゃく)がひどい」「食欲がなく、体重がなかなか増えない」「便秘や軟便が続いている」——こうしたお子さんの不調で、なすすべなく困っているご両親の相談を多くいただきます。
小児への鍼灸というと「怖い」「子どもに鍼を刺すの?」というイメージを持たれる方も多いですが、小児鍼は大人の鍼灸とはまったく異なるアプローチです。
小児鍼とは
小児鍼では、鍼を刺さずに皮膚の表面をやさしくなでる・軽くふれる専用の施術器具(小児鍼用の接触器具)を使います。
乳幼児の皮膚は大人に比べて感受性が高く、表面へのわずかな刺激でも体の反応を引き出すことができます。施術中に泣いてしまうお子さんもいますが、終わった後にぐっすり眠る、機嫌が良くなるという変化が出ることが多いです。
東洋医学から見た「夜泣き・小児の不調」
東洋医学では、乳幼児は「臓腑の機能が未発達」な状態にあると考えます。消化機能・神経系・体温調節などが大人に比べて不安定で、それが夜泣き・かんしゃく・消化不良として現れやすいと捉えます。
① 心神不安(しんしんふあん)——神経系の不安定
睡眠中に突然泣き出す・些細なことで激しく泣く・音や光に過敏、といった症状は、東洋医学では「心(しん)」の神経系が落ち着かない状態として捉えます。夜泣きや寝ぐずりに多いパターンです。
② 脾胃虚弱(ひいきょじゃく)——消化機能の未発達・低下
食が細い・吐き戻しが多い・便秘や下痢を繰り返す・体重増加が緩やか、という場合は、消化吸収を司る「脾・胃」の機能が弱っている状態と考えます。
③ 疳(かん)——興奮・過敏の状態
かんしゃくが激しい・些細なことで泣き続ける・夜泣きが続く、という状態を東洋医学では「疳(かん)」と呼び、小児鍼の代表的な適応のひとつとされています。
当院でのアプローチ
お子さんの施術は、保護者の方に抱っこしていただいたまま、または膝の上に座った状態で行います。無理に押さえることはしません。
施術時間は短く、体への負担が少ないため、生後数ヶ月の乳児から受けていただくことも可能です。初回は保護者の方から現在の状態を詳しくお聞きし、無理のない範囲で進めます。
「鍼灸が子どもに効くの?」という疑問は当然です。まずはご相談だけでもお気軽にどうぞ。
まとめ
✔ 小児鍼は刺さない専用器具で皮膚をなでる・ふれる施術のため、乳幼児にも安全
✔ 夜泣き・かんしゃく・食欲不振・便秘など小児特有の不調に対応する
✔ 保護者の抱っこのまま施術可能。生後数ヶ月から受けていただける
文中のことば解説
小児鍼(しょうにばり):乳幼児・小児を対象にした鍼灸の施術法。刺さない専用器具で皮膚表面を軽くなでることで体の調整を促す。子どもの皮膚の感受性の高さを利用した日本独自の施術スタイル。
疳(かん):東洋医学の小児医学において、かんしゃく・夜泣き・過敏・興奮状態が続く状態を指す。「疳の虫」という言葉の語源でもある。小児鍼の代表的な対象症状。
脾胃(ひい):東洋医学で消化吸収を担う機能の総称。「脾」は消化・吸収・栄養の運搬を、「胃」は食物の受け入れと初期消化を担う。小児は特にこの機能が未発達とされる。